44年ぶりのW杯出場を決めた、北朝鮮代表が抱える問題
2009年9月11日
アジア予選を突破した4チームの強化策

2010年南アフリカワールドカップ・アジア予選を突破したのは、9月の時点で4チーム。日本、オーストラリア、韓国、北朝鮮だ。日本代表はワールドカップ本戦を見据えて、オランダに遠征。世界トップレベルのオランダ、アフリカの強豪国であるガーナと親善試合を行った。オランダには0-3で敗北したが、ガーナには4-3で勝利。課題を見つけ、確実にチームをレベルアップさせようとしている。
韓国とオーストラリアは、9月5日に対戦。試合は3-1で韓国が勝利したが、どちらのチームもワールドカップ本戦に向けての準備を進めている。
しかし、北朝鮮代表には強豪国と親善試合を行う余裕がなかった。8月23日から27日にかけて台湾で行われた、東アジア選手権の準決勝大会を戦う必要があったのだ。
北朝鮮代表が抱える悩み
北朝鮮代表のマッチメイク能力は低い。日本のように潤沢な資金があるわけでもないし、ブラジルのようなサッカー大国でもない。1980年代までは、東欧の社会主義国と親善試合が行えたし、また10年以上前だったら、中東の国々との親善試合も可能だった。しかし現在、中東の国も強豪国と試合が出来る状況になったため、北朝鮮代表と試合を行うメリットは小さくなった。44年ぶりのワールドカップ出場を決めた北朝鮮代表だが、本大会へ向けた強化となると、難しい側面が多い。
そんな北朝鮮代表にとって、来年2月に日本で行われる東アジア選手権は、ワールドカップ本大会に向け、非常に重要な大会となるはずだった。日本では、ワールドカップを間近に控えた2月に、東アジア選手権を行うことに不満もあるだろうが、北朝鮮にとっては大事な強化試合。また東アジア選手権で得られる賞金も、北朝鮮代表にとっては大きなものだ。いつだって北朝鮮代表は、強化費ギリギリのところで動いているのだ。
鄭大世を呼び、必勝体制を作る
来年2月の大事な強化試合を行うため、朝鮮代表は、香港、台湾、グアムと総当りで行われる東アジア選手権・準決勝大会で勝たなければならない。実力から見て、グアムと台湾にはまず勝てる。問題は香港だ。香港代表と引き分けてしまった場合、グアム、台湾との試合で稼いだ得失点差が勝負となる。得失点差の勝負にしないためにも、8月25日の香港戦で、北朝鮮は勝っておきたい。そこで北朝鮮代表は川崎フロンターレのFW鄭大世の召集を決定した。大会初日のグアム戦には間に合わなかったが、北朝鮮代表は9-2でグアムには順当に勝利。この試合の次の日、北朝鮮代表に鄭大世が合流し、香港との試合に挑んだ。
まったくかみ合わない鄭大世

この香港戦のために呼ばれた鄭大世だが、この試合では周囲とまったくかみ合っていなかった。その理由はいくつかある。水原サムスンのMF安英学と、FCロストフのFWホン・ヨンジョがいなかったことも大きいだろう。安英学がいなかったことで、中盤でボールを奪取出来ず、押し込まれる時間帯が長くなる。エースFWのホン・ヨンジョがいないため、状況を打開できないし、マークが鄭大世に集中し思ったようなプレーが出来ない。層が厚いわけではない北朝鮮代表にとって、中心選手が抜けると戦力ダウンは免れない。
しかし、それよりも鄭大世個人の態度、姿勢の方が気になった試合だった。試合開始直後のヘディングシュートを外すと、それ以降はあまり運動量も多くなく、味方に指示を出してばかり。その指示の仕方もあまり、気持ちの良いものではなかった。
ディフェンスをするMF、11番のムン・イングッに対し「カカイ!(もっと近くに!)」だとか、「チャバラ!(ちゃんとつかめ!)」だとか、まるで王様のように指示を出す。他の若い選手にならまだしも、ムン・イングッへの態度には違和感を覚えた。
アジア最終予選で、鄭大世のゴールはアウェイ・イラン戦での1ゴールのみ。彼は北朝鮮代表では代えのきかない選手だが、チームの中心選手で、プレスを必死にかけているムン・イングッに王様のような指示を出すのは、少し違うのではないか?
試合後、グラウンドに座り込む鄭大世

結局香港との試合は0-0の引き分け。台湾にも2-1と2得点しか取れなかった北朝鮮代表は、香港に得失点差で離され、東アジア選手権決勝大会に進むことは出来なかった。
正直に言って、鄭大世だけが悪かったわけではない。香港戦における北朝鮮代表の、チームとしての調子は最悪だった。ハードワークが売りのチームなのに、「楽をして勝とう」としていた。監督も、全力で当たってくる香港に対して、効果的な策を打てていなかった。
しかし、それでも鄭大世の態度が気になった。香港戦の試合後、鄭大世は一人グラウンドに座り込み、なかなか北朝鮮代表の列に加わろうとはしなかった。
ワールドカップの最終予選で、鄭大世は献身的だった。わがままな部分がある鄭大世だが、それを押さえ、チームのために動いていた。チームのために得点を狙っていた。しかし香港戦で鄭大世は、ただエゴイスティックなだけのストライカーに見えた。もちろん、ワールドカップ予選と同じテンションで、東アジア選手権を戦うことは難しいだろうが、それにしても、違いが大きすぎた。
北朝鮮代表のこれから
ワールドカップ最終予選で一度ピークを迎えた北朝鮮代表は今、もっとも調子の悪い時期にきている。キム・ジョンフン監督は、このチームをもう一度立て直さなければならないが、そのとき、鄭大世はうまくチームに溶け込めるのだろうか?
中心選手である鄭大世を外すことは難しいと思うが、鄭大世を含め、チームが一つにまとまらなければ、実力的に劣っている北朝鮮代表に勝機はなくなる。そして、チームをまとめる大事な強化試合となる予定だった、東アジア選手権の切符は香港代表に取られてしまった。
44年ぶりのワールドカップ出場を決めた北朝鮮代表だが、2010年の本大会までの道のりには、難しい問題が山積している。
黄慈権(ファン・チャゴン)


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