「オシム・ジャパン進化論」中村和彦監督インタビュー(下)
岡田康宏(サポティスタ)
あのDVDで伝え切れなかったこと
中村 あのDVDでちょっと伝え切れなかったのが練習の部分で。オシム監督のビブスを使った練習というのは、理解してしまえば実はすごく分かりやすいんですよ。あれは、僕が見た限りでは数の無駄を出さないようにやっているだけなんですね。たとえば、選手が11対11で割り切れず、11対12になるとしたら、11対12でできる練習をやればいい。例えばGKが真ん中にいる練習があったんですが、あれも単純に全員が参加するためにそうなっているだけだと思うんですよ。怪我人がいて半端な人数になると、普通は同数にして交代でやったりしますよね。そうじゃなくて、なんかパパッとアレンジして、そのままやっちゃうんですよ。その仕組みにもっと早く気づいて、最初から狙って撮っていればもっと分かりやすく伝えられたんですけど。
岡田 そういう練習をする監督ってあまりいないんですかね?
中村 それは専門家じゃないので分からないんですけど。ただ素人だから気づいたというのはあるかもしれませんね。一般的な練習方法のパターンに囚われていると気づかないのかもしれない。こっちは先入観なしで見ているから「あっ、こんな簡単なんだ」って。臨機応変にやっているってことですよね。練習でやりたいテーマがあって、それを現実の状況に合わせていく。それは撮影現場でも一緒だと思ったんです。決めたって決めた通りにはならない。でも大きなテーマはあって、それに合わせて臨機応変に対応していかないと作品ができあがらない。一応こちらも「監督」なわけで、「監督」と「監督」としてオシムを見たときに、すごく分かりやすかったんですよね。
岡田 以前、取材で庵野秀明監督にお話を伺ったんですけど、実写は思い通りならないのがおもしろかったって言ってましたね。アニメのキャラは文句を言わないけど、実写だと役者は不機嫌にもなるし全然思い通りにならない、でもそこがおもしろかったって。
中村 全然、思い通りにならないですよ。でも、そこでどう現実に対応していくかがおもしろいところなんです。オシム監督は、大きなテーマと目の前の現実、客観的に見ることと主観的に見ることの双方をずっと繰り返しているような人ですよね。たぶん選手にもそれを植え付けようとしている。たとえば、試合をしていても「俯瞰の映像が見えるように」と言いつつ「ファイトしろ」と言うわけですよ。
岡田 サッカーって、どこか矛盾する要素を両立させないといけない部分がありますよね。
中村 映画もそうなんですよ。バラバラに撮っている中で全体の構想もイメージしなきゃいけないし、でも撮っている瞬間はそんなこと忘れるくらい集中しなきゃいけない。
岡田 「監督」対「監督」という視点はおもしろいですね。
中村 映画監督はクラブチームの監督より代表の監督に近いかもしれませんね。映画もワーッと集まってワーッと撮るものだから。僕は映画作りのときによくサッカーにたとえて話してたんですよ。例えば、とある作品で、監督補という監督と助監督の間の役割をやった時とかは、役者はFWだ。トップ下は監督で、監督補の俺がボランチ。他所のポジションが困っていたら助けに行く。チーフ助監督がセンターバック。お前は守れ。プロデューサーはGK。最後まで守っていてください。あなたが飛び出してくるときはもう……と。俺が分かりやすかっただけかも知れないですけど。
岡田 でも、多くの人がサッカーを知らない場所では、そうやって分かりやすいものにたとえたり、翻訳していくことは有効な気がしますけどね。
中村 土台となる共通理解ができれば違うんでしょうけど。今は、そういった繋ぎ役が必要とされているのかもしれないですね。
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「オシム・ジャパン進化論 日本代表激闘録 AFCアジアカップ2007」
2枚組。収録時間:96分+111分。





















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