コラム

「サッカー批評」森哲也編集長インタビュー(前編)

岡田康宏(サポティスタ)

「サッカー批評」の37号が12/10に発売された。

巻頭の特集は「オシムが教えてくれた」、
メインの特集は「日本のサッカーは誰のものか?」。
今回は、特集の意図や狙い、
取材を終えての感想を森哲也編集長に伺った。
前編は「オシムが教えてくれた」編。

サッカーそのものよりも姿勢に対する支持が多かった

 もともと、特集のテーマは「日本のサッカーは誰のものか?」でいこうと思っていたんですよ。ところが、編集も終盤の段階になってオシム監督が倒れて。発売時期を考えたら「日本のサッカーは誰のものか?」では読者に届かないだろうと。自分は、前もってがちっと決めるんじゃなくて、方向性だけは決まっていて、取材を通した中でキャッチコピーを決めていくんですよ。そのとき「オシムが教えてくれた」というキャッチコピーが頭に浮かんで、じゃあ前の方はオシム監督の記事で固めようと。

 倒れた時点で、代表監督はもう無理だろうと思ったんです。やるとすれば100%を注ぐ人だし、命を削ってでもやる人だから、こちらから代表監督をやってくれとお願いするべきではないなと思ったし、本人が続けたいと言ったとしても断固続けさせてはいけないだろうと。けれど、そうなったとき、オシムのやってきたことが受け継がれていかないんじゃないかと思って。

 時間がなかったので深くはできなかったですね。木村さんと西部さんの記事だけで。木村さんに関しては、オシムの記事はサッカー批評でやってもらったことはないんですよ。ただ、今回のメッセージを伝えるのに、最も適切なのは誰かなと考えると、やはり木村さんがまず頭に浮かんだ。

 アンケートも、「日本のサッカーは誰のものか?」ということで、オシム監督と川淵会長と次期会長に誰が適任なのか、ということをやったんですけど。オシム監督が倒れられたこの時期に、次期会長を大々的にやるのはどうなんだろうということで、今回は自粛しました。次期会長も大切なことだとは思うんですけど、タイミング的な問題で。アンケートに関しては、オシム監督の項目だけを載せることにしました。

 88.7%というオシム監督の支持率は予想以上に高かった。6:4くらいかと思っていたんですけど。すごく多かったのが、サッカーそのものよりも、姿勢に対する支持ですね。前の代表監督と比べて、という部分もあるのでしょうけど。それは本来、代表監督に求めるものなのかと。そういう声が多くなっていること自体がいびつな状況になっている気はしましたね。

 サッカー批評はオシムを支持する方向で来たとは思うんですけど、決して「オシム万歳」と言ってきたわけではないんですよね。オシムが置かれている状況、強化体制、強化方針等を考えたときに、適正に評価されているのか、とりあえず結果を急ぐべきではないだろうというのは感じていて、その部分に対して警鐘を鳴らすスタンスでやってきていたんです。取材を通して、段階的にチーム作りをやっているな、というのは感じていたし、方向としては良い方向に向いているとは感じていていたので、ちょっと結果が悪かったからといって、変に騒ぐべきじゃないだろうと。そう思っていたら、こういうことになってしまって。

彼は議論を求めていたんじゃないかと思うんです

 オシム監督自身、必要以上にプレッシャーを感じていたように見えたんですよ。これまで率いてきたユーゴなどに比べれば、日本のプレッシャーなんてたいしたことないと思うんですけど、海外組を呼ぶべきという風潮や、メディアに対しても異常な警戒心を持っていたし、必要以上に怒っていましたよね。彼は議論を求めていたんじゃないかと思うんです。ただでさえ監督は孤独なわけじゃないですか。スタッフにしろ、協会にしろ、メディアにしろ、みんなして寄りかかるばかりでサポートがちゃんとできていたかというと、できていなかったのかなと。メディアのサポートという意味は、きちんと伝えるということです。

 「オシムが教えてくれた」ことというのを客観的に見ると、考えるきっかけを与えてくれたと思うんですよ。常に彼は投げかけだったと思うんです。日本人はどんなサッカーでやっていくのか。それをずっと問いかけていたと思うんですよ。指導者にも、メディアにも、ファンにも、そういう考えるきっかけを常に与え続けていたような。

 今の流れを見ていると、そういったオシムの投げかけが残らない可能性もあるんじゃないかって思いますよ。考えることをやめちゃうというか。アジアカップなんかでも選手が考え切れていない部分があったと思うんですよね。彼はヒントを与えるんですけど、答えまでは言わなかったから。自分で考えるってことができてない国なんだなって思いますよね、メディアも含めて。自分自身もそうですけど。

 自分自身がオシムから学んだことというと、サッカーに対する姿勢ですね。サッカーにかける情熱、姿勢というのは非の打ち所がなくて。そこだけは誰も文句は言えないと思いますね。私心がないというのも大きいと思います。

 「日本サッカーのために」とかよく言われますけど、僕自身の第一義はそこではなくて、やっぱり「サッカー批評」という雑誌を良くしたい。商業誌なので、まず売れないと残っていかないじゃないですか。そこの勝負から逃げちゃいけないと思うんですよね。サッカーも一緒で、まず勝ち負けから逃げちゃいけないわけじゃないですか。「いい雑誌を作っているから売れなくても」というのは「いいサッカーしているから勝てなくても」というのと一緒なんですよ。そこを逃げちゃいけなくて、やっぱり売れる雑誌を目指さないといけないし、その中でいい雑誌という理想を詰めていかなきゃいけない。それが結果的に日本サッカーのためになればいい。僕が感じたのは、そういうところですかね。オシム監督も、あれだけ「勝利至上主義はダメだ」と言いますけど、あれはけん制なわけで、自身は当然勝ちたいわけです。その中で、勝つための方法論にロマンがあったし理想を捨てていない。勝つために結果も大事だけど、理想の形を考えて挑戦し続けているということですよね。勝つことといいサッカーをすることの突き詰めをしていく尊さがあった。

後編に続く


サッカー批評 issue37(双葉社)

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