「サッカー批評」森哲也編集長インタビュー(後編)
岡田康宏(サポティスタ)
「サッカー批評」の37号が12/10に発売された。
巻頭の特集は「オシムが教えてくれた」、
メインの特集は「日本のサッカーは誰のものか?」。
今回は、特集の意図や狙い、
取材を終えての感想を森哲也編集長に伺った。
後編は「日本のサッカーは誰のものか?」編。
ビジネスの論理とどう付き合っていくのか
今回のテーマというのは、一つは「商業化」とどうやって付き合っていくのかです。日本協会の予算ってすごく大きいものになったわけじゃないですか。昔からは考えられないようなお金だし、世界的に見てもかなり上位に位置する。だけど、サッカーの実力はそこまで強くはない。ビジネス面だけが大きくなっている。そういったときに例えば、もし次のワールドカップに出られなかったらどうなってしまうのか、ということを考えてしまうんですよ。日本代表戦の視聴率が落ちていって、サーッと引かれちゃったらどうなってしまうのか。バレーみたいになって欲しくないなと思うわけですよ。
サッカーの大国と呼ばれる国って豊かになる前からサッカーが根付いているじゃないですか。日本の場合は、ある程度豊かになってからJリーグができてしまったので、ビジネスというのは抜きにはできないと思うんですよ。ただ、ビジネスにはビジネスの論理があって、スポーツにはスポーツの論理があって、もしビジネスが必要だと仮定するなら、どこかで折り合いを付けないといけないわけですよね。こうやったら儲かるのは分かるけど、それはまずいから、ここまでにしてくれって。そういう話ができないとまずいと思うんですよ。ところが、それができていないんじゃないか、というのが今回の取材を通して感じたことです。
慮りすぎているというか、気を使いすぎている。とくにキリンに関しては、そう感じましたね。キリンはすごくいい企業だと思うんですよ。陽の当たらない時代から利益を考えずに支援をしてきたというのは、すごく大きなことだと思うんです。だけど、それを引きずりすぎて、キリンには恩があるからといって協会が遠慮しすぎると、かえってキリンにも迷惑がかかってしまう。キリン自身が「強化ファーストだ。それが第一だ」って言ってくれているんですから、話せば分かってもらえると思うんですけど、そういう話には、たぶんなっていないんじゃないかと。
作り手のほうが勝手にタブーを作っている
もうひとつ、Jリーグを取材していると、無言の圧力でもないですけど、締め付けでもないですけど、そういうニュアンスのものをどこのクラブに行っても感じるんですね。上に対して非常に気を使っているのが伝わってくる。そういうところでギリギリの取材ができないかなと思って、川崎にオファーを出して、クラブと選手、中村憲剛選手と川崎華族の方、前チェアマンの鈴木さんに話しを聞いて。いろいろな人の意見を入れて行こうじゃないかということをやりました。
話を聞いて見ると、川崎は大変だったんだなと。川崎は今年、ACLに出て、リーグでもいい成績は残せなかった。ACLは優勝する以外はほとんどに旨みがないですよね。だから、補強しちゃうと、そのツケを次の年に払わなきゃいけなくなる。かといって現有戦力で戦おうとすると選手が壊れてしまったり、そのリスクはすごく大きいじゃないですか。しかも、Jリーグの幹部がああいう発言をしてしまったから、うかつにターンオーバーができない。「じゃあ、ACLなんていらないよ」ってクラブが出てくるかもしれないですよ。そう思って川崎は徹底的に追いかけたんですよね。浦和が優勝したから万歳じゃなくて、ACLの価値を本気で考えないといけない。
選手にそういうことを聞いても「そんなの言い訳にしかならない」「与えられた条件でやるしかない」と言います。監督も思っていたとしても、そういうことはほとんど口には出さない。だから、そこは外野が言っていかないといけないんですよね。
今のメディアの状況というのは全体的に自粛傾向にあると思うんですよ。これはいい、これが悪いということ自体があまり言えていない。そういうのは取材をしていて、すごく感じるんですよね。スポンサーなんかもタブー視してるけど、実際に取材すれば受けてくれるわけで。作り手のほうが勝手にタブーを作っているだけだと思いますね。
当たり前のことが言えない。昨年のW杯のときだって、テレビを見ていても「日本は厳しいですよ」とは言ってなかったような気がする。中村俊輔に関しても「代表にはいらないんじゃないか」って議論があっても良かったと思うんですよ。「いる」っていう人もいるし、「いらない」っていう人もいるし、両方いると思うんですけど。オシム監督のチーム作りに彼が入るとバランスが壊れちゃうからいらないんじゃないか、と。サッカー批評も含めて、そういうことをもっと議論すべきだったんじゃないかって思うんですよね。
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サッカー批評 issue37(双葉社)





















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