サポティスタ岡田がWiiイレ・長曽我部プロデューサーに会いに行く(上)
岡田康宏(サポティスタ)
発売直前に紹介して以来、サポティスタで何度も取り上げているサッカーゲームの革新、Wiiのウイイレ「ウイニングイレブンプレーメーカー2008」、通称「Wiiイレ」。
実は岡田は、このゲームのためにWiiを買って、自宅に無線LANを導入するくらいはまっているだが、そういった話をコナミの担当の方にしたら、なんと開発者の方にインタビューする機会を作ってもらえることに。

というわけで、3月某日、六本木のコナミ本社に伺い、本作のプロデューサーである長曽我部明義さん、プランナーである田谷淳一さんのお2人に話を聞いてきました。ちなみに本作でサッカーメディアの本格的な取材はサポティスタが初めてだそうです。
ボールを持っていない選手を自由に動かせる
岡田●はじめまして。サポティスタの岡田です。よろしくお願いします。
長曽我部・田谷○よろしくお願いします。
会って早々、まずは一試合、お手合わせ。

・岡田がローマ、田谷さんがフィオレンティーナで対戦(画像をクリックすると動画へ)
プランナーの田谷さんは、CMやプロモーション用のデモ映像のプレイをしている方。試合は、田谷さんの多彩な技を見せてもらいつつ、0−2でしっかりと敗戦。今の試合についての反省と弁明を語りたい気持ちを抑えつつ、インタビューがスタートする。
岡田●今回のプレーメーカーは、僕自身、すごいはまっていて、ゲーム好きな人はもちろんだけど、サッカーファンこそ、はまる要素がたくさんあると思うんです。それで、普段はゲームメディアの取材が多いとは思うんですけど、まずは少しサッカーファン向けに簡単に今回の作品のコンセプトを紹介してもらえますか。
長曽我部○我々は、ウイニングイレブンを10年以上作ってきて、もっと別な形でサッカーゲームが作れるんじゃないか、ということはずっと考えていたんです。サッカー観というのはファンの数だけあって、いろいろな人がいろいろな部分に魅力を感じていると思うんですけれど、90分の試合を10分の試合に落とし込む中で、サッカーのエッセンスのうち「ここだ!」っていう部分を抜き出して作ったのが、従来のウイニングイレブンだと思うんですね。でも本物のサッカーは90分あるので、もっと違った切り口もあるんじゃないかと。それで生まれたのが今回のプレーメーカーということですね。
岡田●従来のウイイレとは発想がかなり違いますよね。
長曽我部○従来のウイニングイレブンが選手個人をボタンでコントロールするのに対して、サッカーそのものを、もう少し組織寄りの視点で切り取ったのがプレーメーカーです。ゲームの特徴としては、ボールを持っていない選手を自由に動かせる、ということで。それによって、スペースをもっと有効に使うことができるんじゃないかなと。攻撃のときは動いてスペースを作ったり、空いているスペースに走り込ませて使ったり、逆に守備のときはカバーリングに入ったり。その動きが今回のポイントですね。
岡田●それは長曽我部さん自身のサッカー観も反映されているんですか?
長曽我部○それも、まああるかな(笑)。ウイイレは「リアル」だということで支持されているんですけど、現実のサッカーと見比べると、現実の「リアル」とは違いがある。その違いの部分を今までとはまた別の切り口で切り取ったということですね。決して個人の能力を軽視している訳ではないんですけど、それだけではないだろうと。そう思っていた部分がある程度反映されていると思います。
考えて走らせるサッカーゲーム
岡田●僕は、今までのウイイレシリーズで一番はまったのが、ウイニングイレブンタクティクスなんですよ。あれは自分では全く選手を操作できなくて、監督の視点で戦術を考え指示を出してくゲームですよね。実は、あのゲームも長曽我部さんのチームが作ったと聞いて、そういった組織や、試合全体を俯瞰で見渡す視点に興味があるのかなと。
長曽我部○サッカーゲームの可能性を広げるというのがタクティクスから続いている我々のチームの目標なので。ウイニングイレブンという大きなチームの中で、当然従来のウイニングイレブンには力を入れているけれど、新しいことにも取り組まないとということで。従来のウイニングイレブンは瞬間瞬間には個人に乗り移ってコントロールするゲームだったので、集団で行うゲームの別の側面にスポットを当てるということで、タクティクスのようにチーム全体をマネージメントしたり、今回のようにチーム全体をコントロールするという方向に自ずと向かっていった感じですね。サッカーには、一人でやるスポーツとは違う、組織のおもしろさがあると思うので、そこに力点を置いてやりました。
岡田●それで今作はオシムさんがおっしゃっていた「人とボールが動くサッカー」が再現できるようなゲームになったんですね。
長曽我部○直接のきっかけではないのですが、社内的にプレゼンをするときは「考えて走らせるサッカーゲーム」ということでプレゼンをしたんですよ。最終的には、「考える」という言葉で難しく取られると嫌だなということでプロモーションの際には外したんですけれど。
田谷○我々がWii版のウイイレを企画して、ちょうどプロトタイプができた時期に、そういった言葉をサッカー誌などでも見かけるようになって。ちょうどシンクロしてましたね。
岡田●「人とボールが動くサッカー」というのは、実はオシムさんの言葉ではなくて 昨年までU-17代表の監督を務めていて、今季からFC東京の監督になった城福さんの言葉なんですよ。城福監督の掲げていた方向性やU-17代表チームのサッカーが、オシム監督のサッカーと重なる部分があって、それでオシム監督のサッカーが「人とボールが動くサッカー」と呼ばれるようになり、日本サッカーの進むべき方向性のキャッチコピーとして定着したんです。そういった指導者同士のシンクロに加えて、同時期にゲームの世界でも、こうやってフリーランやスペースを有効に使うサッカーゲームが出てきたというのは、やっぱり時代性というか、それが今の日本サッカー界に根底する一つの大きなテーマなんでしょうね。
視野が広くないと勝てない
岡田●サポティスタで「Wiiイレで変わるサッカーの見方」という記事を紹介したら、今までで一番のブックマークを集めたんですよ。もしかして、ご覧いただけましたか?
田谷○あれは社内でも話題になってました。
長曽我部○試合を見ていて「線が見える」というのはうれしいですね。僕もプレーメーカーをやるようになって線が見えるようになりました、というのは冗談ですけど(笑)。でも、試合を見ていても、ボール以外の部分に意識が向くようになりましたね。教育ソフトを目指して作ったわけではないんですけど、このゲームが、そういったサッカーの見方の助けになればうれしいですね。
岡田●このゲームは視野が広くないと勝てないですよね。
長曽我部○視野の差は歴然と出ますね。
田谷○僕は、いろいろな人に遊び方のレクチャーしたりするんですけど、実際のサッカーと一緒で、最初、小学生がサッカーを始めるときは、ボールと自分と相手と一対一の関係しか見えないと思うんですよ。でも、中学生、高校生と成長するに従って、周りの味方を使ってみたり、逆サイドに振ってみたりと、どんどん視野が広くなっていくと思うんです。このゲームでも、ボールホルダーだけじゃなくて、どこにパスを出そうとか、誰がフリーなんだろうとか、段階を経て視野が広くなっていくんですね。そのあたりはユーザーのサッカーの見方が変わっていくのと一緒なのかもしれません。
岡田●確かに。自分でプレーしていても、負けているときはどんどん視野が狭くなっていくんですよ。
田谷○そうですね。負けているときに限って、狭いスペースでやろうとしてしまうんですよね。
長曽我部○開発チームでいつも田谷と対戦しているスタッフがいて、僕は後ろで見ているんですけど、やっぱり明らかに見ているところが違うんですね。彼は空いているスペースは使うし、チャンスがあればフリーランさせるんだけど、対戦相手にはそのスペースが見えていないんですよ。後ろから見ているとその差が顕著に表れるので、そのへんはおもしろいなと。
岡田●プレーにサッカー観やスタイルがものすごく出ますよね。
田谷○従来のウイニングイレブンに比べて、ドリブルは操作しやすくはないんですけど、その分、周りのスペースが見えていたり、ここにパスを出せばチャンスになるのにと頭に閃く人は、今までは熟練しないとできなかったような華麗なプレーが比較的簡単にできるようになるんじゃないかと思いますね。最初はちょっと操作性に癖があると思うんですけど。
長曽我部○第一印象で難しいって思ってる人が想像以上に多いみたいで。画面をリモコンで指すという操作がウイイレシリーズでは初めてなので、その感覚になれるまでが難しそうと感じたり、今までのプレステのウイイレがサッカーゲームのスタンダードになっているので、それと操作が違うというだけで難しいって思ってしまう人が多いみたいですね。
岡田●そこは実際に遊んでみれば、全く逆だとわかってもらえると思うんですけどね。むしろ、今回のウイイレは操作が非常に直感的ですよね。表に出ているデータも少ないし。あれは、表に出ているデータ以外も当然あるわけですよね?
長曽我部○そうですね。ネット上でも、パラメーターが簡略化されていて個性がない、という評価があったんですけど、表示されているパラメーターが少なくなっているのは、いきなり大量に数字が並んでいて、どのパラメーターが大事なのか訳がわからない、という状態を避けたかったからなんですよ。なので、表示を簡略化しているだけで、内部的なパラメーターは何も簡略化はしていません。従来のウイニングイレブンにあるパラーメーターは一通り入っています。簡略化したのは表示だけで、選手個々の能力を軽視していることもないし、選手の個性が失われているということはありません。これは少し強調したいところですね。

・フォーメーションの設定画面も直感的に操作できる(画像をクリックすると動画へ)
イタリアとイングランドの違いをどう思う?
岡田●欧州版のプロモーションで海外を回ったそうですが、反応はどうでしたか?
長曽我部○欧州5カ国を回ったんですよ。初めはイタリアのミラン、次がスペインのマドリード、ドイツのミュンヘン、フランスはパリ、UKのロンドン。1週間くらいのスケジュールで死にそうな思いで回ったんですけど。スペインでは、サンチャゴベルナベウで発表会をやらせてもらって。
田谷○プレスルームで記者発表をやらしてもらって、そのあとスタジアムツアーでピッチの脇まで回らせてもらって、かなりテンションが上がりましたね。

・サンチャゴベルナベウで記念撮影。
長曽我部○国ごとの違いで言うと、イタリアでプレゼンテーションをしたときに、そういうときってわかりやすい方から先に説明をするので攻撃から説明するんですよ。で、守備まで説明すると話が結構長くなるので、だいたいメディアが集まっている状態では攻撃主体で説明するんですけど、そのあとの質問で「攻撃主体のゲームだったけれど、イングランド・リーグっぽくないか?」「セリエAとイングランド・リーグの違いをどう思うか?」という質問は受けましたね。向こうのメディアには、プレゼンだから攻撃主体で説明したけれど、守備もいろいろなことができますよ、ということを説明したんですけれど。
岡田●その辺はやはり、イタリアですね。
長曽我部○昨年の秋に、このゲームをスペインで最初に発表して予告編を出したんですよ。それが、非公式な形でyoutubueに載ってしまったんですが、ブラジルでやたらと人気があったんですよ。
田谷○なぜかブラジルからのアクセスが異常に多くて。
(→非公式な形でアップされた欧州版の予告編動画)
長曽我部○4分くらいの予告編なんですけど、ブラジルが得点するシーンは1シーンくらいしかなくて。なぜ人気があったのかは不明なんですけど、とにかくブラジルからのアクセスが非常に多かったと。
岡田●どちらかというとブラジル人はボールを持ったら離さないし、従来のウイイレの方が合いそうですけどね(笑)。メディアの反応で、日本と海外での反応の違いはありましたか?
長曽我部○どちらかといえば、海外の方が熱心でしたね。いや、そんなことないかな(笑)。
田谷○日本では直接取材を受けているメディアはゲーム誌がほとんどなんですけど、海外は普通のスポーツ系のメディアも多数来ていたので、そこがちょっと違うかなと。日本でも、ぜひゲーム誌以外のメディアでも取材してもらいたいですよね。
岡田●今回の記事を見て興味を持ってくれたメディアの方は、ぜひ! ということですね(笑)。
長曽我部○はじめはちょっと取っ付き難いように見えるかもしれませんけど、一旦慣れれば普段ゲームをやっていない人でもかなり直感的に操作できると思うので、できればサッカーゲームは苦手と思っていた人にも、ぜひ一度遊んで見てもらいたいですよね。ネットの反応を見ていても、今までウイイレをやっていなかった人、最近ゲームから離れていた人が結構遊んでくれているようなので、その辺はすごくうれしいですね。
次回、中編に続く。
サポティスタ岡田がWiiイレ・長曽我部プロデューサーに会いに行く(中)
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