コラム

「オシム・ジャパン進化論」中村和彦監督インタビュー(上)

岡田康宏(サポティスタ)

一本の映画のつもりで作ったんです

「前回(2004年)のアジアカップのDVDも作ったんですけど、あれは優勝の歓喜に向かって作っていけば最後に『バンザイ』で終われるんですよ。でも今回は4位。『バンザイ』とはならない分、内容の検証をして『結果だけじゃないぞ』という作りにしたんです」

12月5日、オシムジャパン初めての、そして結果的に最初で最後となってしまったオフィシャルDVD「オシム・ジャパン進化論 日本代表激闘録 AFCアジアカップ2007」が発売された。この作品を監督したのは、知的障害者サッカー日本代表をドキュメントした映画「プライドinブルー」で文化庁映画賞優秀賞を受賞した中村和彦監督だ。

冒頭の言葉どおり、日本代表はアジアカップで4位に終わり、多くのファンにとっては不満の残る結果となった。だが、DVDの制作においては、優勝というカタルシスがない分、商品として成り立たせるために中身を掘り下げて検証することが求められ、結果として出来上がった作品は内容の濃いものとなった。

とくに、阿部勇樹、鈴木啓太、中村憲剛の3選手、そしてオシム監督への追加インタビューは、オシムジャパンの挑戦を振り返り、日本サッカーに足りないのものを知るためには格好の素材だ。

「最初に誰にインタビューしたいかという話になったとき、阿部選手は絶対に外せないと言いました。それは見ればわかってもらえると思うんですけど、オシムの教え子ということでもあるし、初戦でああいうプレーをして、それ以降も結構矢面に立たされるような部分があったし。オシム監督に名指しで叱られた、というのを両者の口から振り返ってもらいたいというのもあったからです」

しかし、あの大会のことを阿部に聞くとなれば間違いなく厳しいインタビューになる。

「きついですよ。質問しているこっちもきついです。ただ、前回のアジアカップでも、DFに話を聞くときは失点のことを執拗に聞いたりしているんですよ。DFにインタビューするのは、こちらも相当な覚悟が要るし、エネルギーが要ります。どうしても失点に触れないわけにいかないですから。問い詰めていくようなものですよ。ここからこう来てこう来てどうだったんですかみたいな。うろ覚えで聞くと絶対ダメなので、誰からボールが出て、DFがどう動いて、全部チェックしていきますね。選手からしたらイヤなヤツでしょうけど。他の人がどうやっているかは分からないですよ。僕はサッカージャーナリストではないので、自分のやり方でやっているだけですから。だからこそできるのかもしれないですけどね。嫌われてもいいやって思えるから。ひょっとしたら、ずっと取材している人には難しいことなのかもしれない」

もう一つ、この作品の特徴は、ミックスゾーンでの選手の言葉と後で撮ったインタビューなどが切り貼りされて繋げられ、一つの物語を形作っていくような構成になっていることだ。

「サッカーのDVDでは普通やらないことをやっているんですよ。制作の都合でインタビューできる選手が3人だけになってしまって、言葉が足りていないので、一度すべてを解体して、言葉だけで繋げていってるんです。だけど、普通はやらないですね。間にナレーションを入れたりしますから。言葉と言葉がむき出しのまま繋がっているっていうのは僕も見たことないですよ」

いくつかの条件が重なり、この作品は普通のサッカーDVDとは異なる構成となった。そしてラストを締めくくるのはオシム監督のロングインタビュー。

「オシム監督のインタビューも普通だったら、特典映像として最後に付けたりするんです。でも、それではつまらないと思った。もともと2枚組みで、という話だったんですよ。となると最低でも3時間は必要じゃないですか。4位だった大会をどうやって2枚組にするのか。それなら、オシム監督の話をじっくり聞いて、オシム語録を紐解くみたいなことをやろうと。自分としては、一つの作品、一本の映画のつもりで作ったんです」

(中)へ続く


「オシム・ジャパン進化論 日本代表激闘録 AFCアジアカップ2007」

2枚組。収録時間:96分+111分。

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