「オシム・ジャパン進化論」中村和彦監督インタビュー(中)
岡田康宏(サポティスタ)
スポーツが文化として根付いていない
「『オシム』と名の付く本は片っ端から読みました。木村(元彦)さんの本を読むと、結構サッカー以外の部分まで書いているじゃないですか。オシム監督の著書を読んでもサッカー以外のことに言及している部分がいっぱいあった。だから、試合の局面だけじゃないところまで話を持っていければ、とは最初から思っていたんです。そこまで掘り下げれば、4位でも作品として充分成立する、と」
この作品の一つの見所は、ピッチ上の試合の話にとどまらず、より広い視野で、オシム監督が日本サッカー界の今後の課題を語っているところだ。たとえば、オシム監督はインタビューの中で、日本サッカー界のすぐには解決できない課題としてこのように語っている。
「まだ日本の社会の中ではサッカーが高い位置を占めていません。(中略)『あってもいいスポーツ』ではなく『なければならないもの』にまだなっていないのです。サッカーなしではやっていけないという段階に日本の社会が到達したところで、我々は真剣に客観的な話をすることが初めてできるようになるのでしょう」
これはなかなか壮大な話だ。
岡田 中村監督は、このオシム監督の言葉をどのように受け止めましたか?
中村 やはり、そこまで行かないと本当に根付いたことにはならないんでしょうね。ヨーロッパみたいになるのかどうかは分からないですけど、それに近いところまでは行かないと。ワールドカップでいえば、単純に結果だけではなくて、どういう負け方なら納得できるか、ということですよね。その共通認識がまだないから。日本がそのまま、ヨーロッパのようになるとは思わないけれど、サッカーに限らず、スポーツ全般が文化として根付いていないという部分はありますよね。オシム監督の言葉は「サッカー」という言葉を他のスポーツに置き換えて通用するかもしれません。それは「プライドinブルー」でも感じたことですし、そういうのを覆したい、という思いもあります。
岡田 スポーツ全般が文化として根付いていないということに関して、何か実感することはありますか? たとえば一つ僕が思うのは、よく雑誌の最後のほうにカルチャーものの囲みコラムがあったりするじゃないですか、「music」とか「movie」とか。その中に「football」は入ってないんですよ。でも、いつか当たり前のようにそこに「football」が入るようになればいいし、そうなるように自分のできる範囲でできることをやっていきたいなと。自分のフィールドではそういうことを感じたり考えたりするんですけど、たとえば映像の分野で似たようなことを感じることってありますか?
中村 「プライドinブルー」でいうと、制作サイドにはずっとサッカー寄りに閉じたものになるんじゃないかというのは警戒されていました。サッカーファンしか見れないものになるんじゃないかと。元々こちらも、そういうものにしたくないと思っているのに、なかなか信じてもらえなくて。そういう難しさはありましたね。日本ってジャンル分けしたがるじゃないですか。「スポーツもの」「何々もの」って。
岡田 僕も、実際に見るまでは「障害者もの」だと思ってましたからね。
中村 でも僕はそういうジャンルに入らないものを作りたかったんですよ。それはずっと昔からそうなんです。ジャンル映画を好きな人もいますけど、僕はそういうのがダメなんですよね。だから、境界線上にあるようなものを作りたくて。それはある種、僕のテーマでもあるんですよ。人間の感情って、こう思うけどああ思うとか、本当は一つには決められない。でも、一つに決めたがる人って多いじゃないですか。
岡田 人間の考えることって「1」か「0」かじゃないですもんね。
中村 だから「1」か「0」かじゃないものをやりたかった。それは自分の中では一貫しているんですよ。
岡田 それはよく分かります。僕は枡野浩一さんという歌人の大ファンなんですけど、彼が以前、本屋さんがどこの棚に置くか迷うような本を作りたい、と言っていて、僕自身もずっとそういう意識があるんですよ。
中村 「プライドinブルー」でも言われましたね。どこの棚に置くか迷うようなものはダメだって。でも、僕はそういうものを作りたいんです。昔から、何かを言った瞬間、でも違うんじゃないかなって思ったり、そういうことがよくあるんですよ。それで、何言ってるか分からないとか言われるんですけど。でも、オシムもよくそういうことを言うじゃないですか。だから、俺の中では、オシムの言っていることはすごく分かりやすいんですよ。
岡田 平然と矛盾することを言いますからね。
中村 でも、そういうものだから。何か一つ言ったら必ず別の側面もあるってことで。
岡田 その言葉で割り切れない部分を伝えるのが難しいんですよね。
中村 でも、それがサッカーじゃないですか。サッカーなんて割り切れるわけがないんだから。
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「オシム・ジャパン進化論 日本代表激闘録 AFCアジアカップ2007」
2枚組。収録時間:96分+111分。





















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