なでしこジャパンの歩みを伝える(前)
11月12日、なでしこジャパンの軌跡を追ったフォトブック「あすなろなでしこ」が発売された。北京五輪での活躍と女子サッカー界の歩みを振り返りつつ、著者であるカメラマンの早草紀子さんに話を聞いた。
数々の写真と共に、北京五輪日本女子代表選手18人全員の独占インタビューがまとめられた本書は、北京オリンピックで4位という結果を残し世間に大きなインパクトを与えた「なでしこジャパン」の記録であり、同時に、1人のカメラマンが14年間、自身の歩みとともに撮り貯めた「日本女子サッカー」の記録でもある。
本書のすべての写真を撮影、文章を執筆したカメラマンの早草紀子さんに話を聞いた。
女子サッカーの歴史を感じてもらえれば
北京オリンピックでの彼女たちを見て、見た人は何かを感じてくれたと思うんです。ちょうど14年前に、私がプロとして写真を撮り始めたとき、今のなでしこジャパンで活躍している選手たちが初めて代表に呼ばれて、まだ右も左も分からないまま、強豪国に負け続けていた最初の頃だった。そういった歴史も含めて、この本を読んだ人がこの年代の自分を振り返りつつ、女子サッカーを感じてもらえれば、と思います。
彼女たちも最初からすごいことができたわけではないし、紆余曲折もあった。ただ、それを年表で伝えるのではなく、写真を通して感情を伝えたいと。プレーの写真は比較的どの媒体でも見れるので、その背景が伝わる写真を中心に選びました。TVには写らないような部分を切り取ってれるのが現地にいることの意味だと思うので。

大会の期間中にどんどん変わっていった
彼女たちは、北京オリンピックで4位という結果を残しましたが、オリンピックに入ってきたときは、まだチームがバラバラだったんです。これじゃ厳しいな、と正直思いました。初戦とか、今までやってきたことが出せてなかった。でも変わりました。1試合ごとにみるみる良くなっていったんです。
アテネ五輪のチームがあまりにも劇的なチームだったので、最初はみんなあれを越えられないと思っていたところはあるんじゃないでしょうか。でも、頑張れば越えられるんだなって。きっとベテランも自分たちを越えたかっただろうし、若手はなおのこと越えたかったでしょう。周りはアテネのときのことばかり言うけど、アテネを経験していない選手にとっては北京しかない訳ですから。だから、4位という結果もそうだけど、最終的にチームとしてまとまって、一つになれたことが、若手の選手にとってはすごく自信になったと思います。
本当に、大会の期間中にどんどん変わっていきました。そばで見ていても、どうしてこんなに変わったのか分からない。本人たちも分からないって言ってました。「何かいいもの食べてるの?」って聞いても「いや、普通のご飯なんですけど」って(笑)。

見直すたびに違う意味が見えてくる
オールカラー全144ページで、写真は350枚から400枚くらい入っています。1枚の写真で状況を見せるというより前後の物語が見える写真を選んでいるつもりです。想像力をくすぐるような写真ってあるじゃないですか。1つの写真でも、見た人が何通りにも想像できるような。そういう想像を展開していけるような写真をいつも撮ろうと思っています。だから、何度か見直すうちに違った意味合いが見えてくる写真もあると思うんですよ。一度最後まで見て、彼女たちのインタビューを読んで、もう一度見直すと、1枚の写真だけど前とは違った意味に取れることもあるかもしれません。私は密かに「スルメ本」と呼んでいるんですけど、噛んでいくウチに味が出てくる、最初の印象とは違ったモノが見えてきてくれればいいなと思います。
インタビューに関しては、書き手の言葉を挟んで括弧で繋いでいく形だと、どうしても私が持って行きたい方向に誘導してしまうので、ほとんど、選手の言葉だけでやっています。写真に添えられた言葉も、基本的には彼女たちがその時話していた言葉の中から抜粋しているので、こちらが作ることは極力抑えて、彼女たちの言葉を伝えようと。
何かをはじめるきっかけ、背中を押せる本に
こういうことを言いたい、こういうことを伝えたい、というのではなくて、見た人によって様々な印象を持つだろうし、読んでくれた人が、読んでくれた人なりの何かを感じ取ってくれればいいなと思っています。
答えは出していないつもりなので。これを見て、女子サッカーを見に行くようになってくれればベストですけど、それだけじゃなくて、自分でもなにか始めてみようとか、なにか、今と違うことをしてみようとか、その人にとってのきっかけ、そっと背中を押せる本になってくれればと思います。
後編に続く。

早草紀子(はやくさ・のりこ)プロフィール
東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりJリーグ撮影を開始。1996年から日本女子サッカーリーグのオフィシャル・ カメラマンに。以降サッカー専門誌で培った経験を武器にサッカー撮影にどっぷり浸かる。現在、Jリーグ「大宮アルディージャ」オフィシャルフォトブラファーであり、日本サッカー協会オフィシャルウェブサイトでは女子サッカー連載コラム担当。

なでしこジャパンフォトブック「あすなろなでしこ」
写真と文 早草紀子
















